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 外国人コーチを招聘し、改革へ。日本自転車トラック競技(短距離)の強化育成新体制発表記者会見レポート


Photo:Takenori WAKO


10月31日(月)、都内の紀尾井フォーラムにおいて「日本自転車トラック競技(短距離)の強化育成新体制発表記者会見」が行われ、外国人コーチの起用を含めたトラックナショナルチーム(短距離)と、競輪学校の新体制が発表されました。


今回のプロジェクトは、JKAとJCFが連携し、競輪学校とサイクルスポーツセンターを拠点とした強化育成システムの構築を行い、世界で活躍できるトラック短距離選手を育てることを目的としています。
そのための体制作りとして、競輪学校内にハイパフォーマンスディビジョン(HPD)を設置することと、ブノワ・ヴェトゥ氏とジェイソン・ニブレット氏の2名がHPDとトラックナショナルチーム(短距離)のコーチに就任することが決定しました。


もともと競輪学校には、在籍する生徒の中でも能力の高い選手を選抜した、いわゆるエリート教場(滝澤正光校長自らが指導していたので、滝澤教場などとも呼ばれていました)というものがあるのですが、そこをハイパフォーマンスディビジョン(HPD)という名称にし、選ばれた生徒たちはブノワ氏とニブレット氏の指導を受け、最新機器を使用した分析や、バイオメカニクスを使った最新理論によって強化を図っていくこととなります。
なお、競輪学校ではこのHPDに入る選手については入試特別枠や、費用免除などの検討もしているとのこと。
また、競輪学校生だけでなく、トラック短距離強化指定選手についても両氏が指導を行い、実質的にトラックナショナルチームの短距離陣を率いることとなります。


さて、気になるのはやはり今回招聘されたブノワ氏とニブレット氏についてですね。



Photo:Takenori WAKO
ブノワ・ヴェトゥ氏(フランス・43歳)
ナショナルチームスプリントヘッドコーチ兼競輪学校HPDヘッドコーチ


まず、ナショナルチームスプリントヘッドコーチ兼競輪学校HPDヘッドコーチに就任したブノワ氏(今回の記者会見でもそうなのですが、関係者はみな “ブノワ”とファーストネームで呼んでいるので、それにならって呼ばせてもらいます)。
これまでフランス、ロシアなどでコーチを務め、リオオリンピックまでは中国ナショナルチームでその手腕を振るっていました。近年の中国短距離勢、特に女子の活躍は目覚しく、リオでも女子チームスプリントは世界記録で金メダルを獲得しています。
今季も日本だけでなく、フランス、ロシア、中国からコーチのオファーがあったそうで、世界で引っ張りだこのメダル請負人が日本をどう変えてくれるのか。



Photo:Takenori WAKO
ジェイソン・ニブレット氏(オーストラリア・33歳)
ナショナルチームスプリントアシスタントコーチ兼競輪学校HPDアシスタントコーチ


ブノワ氏をサポートする形のアシスタントコーチという肩書きになったニブレット氏は、現役時代はオーストラリアの短距離トップ選手として世界の舞台で活躍。2010年と2012年には短期登録選手として日本の競輪にも参戦するなど、日本にも馴染みがあります。
現役を退いた2013年からオーストラリアでジュニアやパラサイクリングのコーチを務め、まだ指導者としてのキャリアは浅いものの、ニブレット氏自身は「(ブノワ氏の)フランス流とオーストラリア流を合わせて、とても強い競輪選手を育てることができると思うし、日本の自転車競技も強くなれると思う」と意欲を見せていました。



Photo:Takenori WAKO
記者会見に出席した左から中野浩一JCF強化委員長、橋本聖子JCF会長、ブノワ・ヴェトゥ氏、ジェイソン・ニブレット氏、吉田和憲JKA会長、滝澤正光日本競輪学校校長


質疑応答や囲み取材もあり、やはり質問はブノワ氏に向けてのものが中心となったのですが、気になったものをいくつか。
まず、橋本聖子JCF会長の「東京オリンピックパラリンピックでは5つ以上のメダル獲得を目指したい」という発言に対して、現場を任される立場として見解を訊かれたブノワ氏は、「これまでの日本の自転車競技の歴史を見ると、すぐにたくさんのメダルを取れるとは言えないが、まずは先に世界選手権でメダルを取ることを目指し、その状況を見て東京オリンピックでの目標を決めたい」とのこと。


そして、ブノワ氏が求める選手とは、“高いモチベーションを持った、才能のある選手”で、その才能とは「努力できること」。体格などフィジカルな面はそれほどこだわらないそうで、メンタル面が重要だと言います。そして、今一番欲しい選手は、チームスプリントの第1走を務められる選手だとも発言。
新たな人材の発掘については、それほど多くの人数を想定しているわけではないようで、「才能ある選手を3、4人ほど見つけたい」と話していました。
ちなみにブノワ氏が、今現在タレント性のある選手として名前を挙げたのが、脇本雄太選手と新田祐大選手。両選手ともこれからもっと伸びると断言し、特に新田選手に関しては「考え方をちょっと変えるだけでもっともっと伸びる。伸び代はまだまだある」とコメントしました。


また、ブノワ氏は日本のこれまでのトレーニングメソッドについて、「申し訳ないが、他の外国と比べると少々時代遅れで、全く効果のないものに思えた」と厳しい意見を述べました。全体的に日本は練習量が多すぎると言い、量よりも質を重視するトレーニングが重要だと、今後の改善点として挙げていました。


今後の新体制でのスケジュールですが、すでに10月後半に競輪学校のHPDに入る生徒の選定が両コーチにより行われ、今回は男子4名、女子2名が選考されており、11月初旬からこの体制での教育がスタートする流れとのこと。
さらに11月中には競輪選手をはじめ、大学生や高校生なども含め、才能のある選手を探すための視察なども予定しているようです。
また、12月17日には人材発掘のための「第1回チャレンジ・トラック」が伊豆ベロドロームで開催されます。


東京オリンピックに向け、日本の自転車界も本腰を入れ、動き始めました。
外国人コーチを迎えて、どんな改革が行われるのか、大いに期待したいところです!