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 祝メダル獲得! トラックW杯日本選手団帰国記者会見レポート。短距離「世界と戦える自信を持つことで国際レベルの実力へ」 中距離「詳細なデータ分析とコミュニケーションで能力が開花」


W杯第3戦、第4戦をメダルラッシュで帰国した日本選手団


2017-2018 UCIトラックW杯第3戦、第4戦を終えた日本選手団が帰国した12月13日(水)、羽田空港において記者会見が行われました。


会見に出席したのは第3戦、第4戦でメダルを獲得した脇本雄太選手、梶原悠未選手、橋英也選手、一丸尚伍選手、近谷涼選手、今村駿介選手、沢田桂太郎選手、中村妃智選手、鈴木奈央選手、橋本優弥選手、古山稀絵選手。
そしてブノワ・ヴェトゥ短距離ヘッドコーチ、佐藤一朗中距離アシスタントコーチ、佐久間重光JCF副会長、中野浩一選手強化委員長の11名。



第4戦の男子ケイリンで優勝の脇本雄太選手


まずは第4戦サンティアゴ大会の男子ケイリンで金メダルに輝いた脇本雄太選手。
「今回、ワールドカップは1戦から4戦まで戦ってきましたが、第4戦に限っていえば、僕の中でもすごく自信を持ってケイリンを走れたかなと思っています。第3戦では4位という悔しい思いをした中で、ブノワコーチからもっと自信を持って走れという教えをもらい、第4戦ではそこを意識してレースを走りましたが、それがうまくいって本当によかった。このあとのアジア選手権、世界選手権に向けていい第一歩を踏み出せたと思います」と挨拶。
残り1周から捲っていった決勝のレース展開については「踏むところを1回に絞ることを重点的に考えていた」と話します。1回戦と2回戦は先行で勝利した脇本選手ですが、「それまでのレースを周りの選手たちも見ているので、その思惑に乗らないこと、そして踏むところを1回で決めて、そこに全力を注ぐことで周りの選手とのスピード差を作って捲ることができた」。
W杯の男子ケイリンで日本人選手が金メダルを獲得したのは14年ぶり(2003年の矢口啓一郎選手以来)ということについては、「14年間も誰も金メダルが獲れなかったのかと、それだけ弱かったのかと。でもこれで日本の競輪選手でも競技のケイリンで勝てるんだということを証明できたと思います」と力強くコメント!



ブノワ・ヴェトゥ短距離ヘッドコーチ


今季のW杯では短距離陣はこの脇本選手の金メダルのみですが、同じくケイリンの決勝に乗った渡邉一成選手が5位、男子スプリントの河端朋之選手が4位、小林優香選手が女子ケイリン4位など、他の選手たちもメダルまであと一歩という成績を収めました。
その要因をヴェトゥコーチは「一年間指導してきた中で、選手たちの変化はたくさんあり、これからもいろいろな変化があると思うが、なにより自分に対する自信、外国人選手より弱くない、自分も勝てるんだという自覚が生まれたことが大きな変化。脇本選手、新田選手、河端選手、小林選手などは本当に国際レベルまできていて、それは自分に対する自信がついてきたことが一番大きいと思う」と分析。
そして今回の脇本選手のメダル獲得については「選手たちの中にはたくさんの才能があることがわかった。ただ、その才能はまだ100パーセント発揮できていないので、これが第一歩。脇本選手のメダルは選手たちの才能が十分にあることの証拠になったのではと思います」と話しました。



第3戦、第4戦と2大会連続で女子オムニアム優勝の梶原悠未選手


女子オムニアムで2大会連続連続優勝という快挙をやってのけた梶原悠未選手。
まずは「第3戦のオムニアムで日本史上初の金メダルを獲得、第4戦では2連勝することができ、とても嬉しく思います。今まで育ててくれた家族や、日本からサポートしてくださる皆さん、応援してくださる方々に感謝の気持ちでいっぱいです」と挨拶。
今年4月のトラック世界選手権ではオムニアム11位、またロードレースのほうでもなかなか結果が残せず、悔しい思いを味わったり、落ち込んだ時期もあったと言いますが、「自分はまだ立ち止まってはいないと信じて、進み続けていれば全く問題はないんだと、一日一日を大切に過ごしてきました。自分の努力が報われて本当に嬉しい」と、今回のメダル獲得についての気持ちを語った梶原選手。
そして「来年2月の世界選手権ではもう一度しっかり準備しなおして、金メダルを獲得できるように努力していきたいと思います」と、次なる目標への意気込みも聞かせてくれました。



第4戦の男子オムニアムで2位の橋本英也選手


これまでアジア選手権アジア大会などでは金メダルを獲得している橋本選手ですが、W杯でのメダルは今回が初めて。
オムニアムはリオオリンピックまでとはレギュレーションが変わり、昨シーズンからゲーム系種目だけの構成に。この変更が橋本選手にとっても大きな追い風となっているのは間違いないのですが、イアン・メルビン中距離ヘッドコーチの指導が、もともと高いポテンシャルを持つ橋本選手にどんな影響を及ぼしたのか。
橋本選手のメルビンコーチ評は「僕自身、今回が2年ぶりのW杯で、イアンヘッドコーチになってからは初めてのレースでしたが、イアンコーチは選手の個々の長所を理解して、それに合うような走りを提案してくれ、それを実行するだけで結果がついてきたというのが率直な感想。すごくわかりやすいですね」。



第4戦で2位となった男子団体追抜。左から沢田選手、一丸選手、今村選手、近谷選手


第2戦、第4戦で3位となった女子団体追抜。左から橋本選手、古山選手、梶原選手、中村選手、鈴木選手


ある意味、もっとも驚かせてくれたのがこの団体追抜。
タイム種目は、その実力がはっきりタイムに現れるので非常にわかりやすいのですが、男子はこれまでの日本記録より4秒早い3分59秒071、女子に至ってはこれまでより7秒も縮める4分27秒329で、男女ともに新記録を樹立。昨シーズンまでは予選敗退を繰り返していた団体追抜が、この短期間で劇的ともいえる変化を遂げた理由は最も興味深いところだと思います。


選手たちは10月に就任したばかりのメルビンコーチの指導について、こんなふうに語りました。
まず、男子代表としてコメントした今村選手は「イアンコーチは、4人がチームとしてコミュニケーションを取り合うことを一番重視しています。今回の新記録も4分を切る目標が初めからあったわけではないですが、4人のチームワークと積極的に攻めたことでタイムがついてきたんじゃなかなと思います」
女子の中村選手は「女子もコミュニケーションはすごく言われていますが、特に走り方は、誰がどの順番でどれくらいのタイムで回ってくるかとか、細かく設定するようになったのが大きく変わった部分だと思います」
鈴木選手も「走りながら、ちょっときつそうだなとか、もっと引けそうかなとか、お互いの状態を見て声を掛け合うようになったのが一番の変化」とコメント。


選手一人一人の走行データを詳しく分析し、誰がどのくらい引き、どのタイミングで先頭交代するかなどを細かく設定、さらに走りながら声を掛けお互いの状態を把握し合うという、メルビンコーチの指導が今回の結果の要因のひとつになったことは間違いありません。
ただ、メルビンコーチは今回の会見には出席していませんが、書面でのコメントの中で「10月の就任当初より、このチームの秘めたるポテンシャルに期待を感じていた」と語っています。
つまり、短期間で突然強くなったわけではなく、日本チームはもともとこれだけのタイムを出せる力は持ったいたのだと思います。それがテクニカル面で世界のスタンダートを導入したメルビンコーチと、フィジカル面を担当する佐藤コーチの新体制によって、選手たちがもともと持つポテンシャルを引き出すことに成功した結果が、今回のタイムやメダル獲得に繋がったと言えるのではないでしょうか。


さて、今後の日本ナショナルチームの予定ですが、短距離陣は年明け1月7日(日)〜30日(火)までアメリカ・マイアミで、中距離陣は1月8日(日)〜2月10日(土)までオーストラリア・ブリスベンでそれぞれ強化合宿を行います。
トラックW杯は第5戦がベラルーシで1月19日(金)〜21日(日)に開催されますが、こちらにはナショナルチームとしては参戦しない方向とのこと。
海外での強化合宿を経て、2月16日(金)〜20日(火)開催のアジア選手権(マレーシア・クアラルンプール)、そして2月28日(水)〜3月4日(日)開催の世界選手権(オランダ・アペルドールン)に出場を予定しています!



日本のこれからの躍進に期待!