CYCLIST FAN

トラックレース&競輪を中心とした自転車競技情報ブログ

 松本整氏ナショナルチーム総監督就任記者会見! 新監督の方針とは?

遅くなってしまいましたが、5月16日に行われた松本整氏のナショナルチーム総監督就任記者会見の内容をご紹介したいと思います。会見には松本整新監督と、JCF富原忠夫会長、中野浩一強化委員長が出席。それぞれのご挨拶のあと、報道メディアからの質疑応答となります。ちなみに松本監督、富原会長、中野強化委員長のコメントはほぼ抜粋なく、発言されたままを掲載しています。ちょっと長い記事になってしまいましたが、今後のナショナルチームの方針など“松本イズム”が語られていますので、ぜひともご一読を!


まずは富原会長のご挨拶から。
富原会長挨拶
「私は4月1日から競技連盟の会長になりました。JCFを新たに改革したいということで、中野強化委員長並びに松本総監督にお願いすることとなりました。今までアテネ、北京と日本人選手がメダルを獲っていますが、来年に迫ったロンドンオリンピックにも一役買っていただきたいということで、お願いしました。
(スタッフには)ロンドンまで1年しかありませんが、できるだけ強化委員長、総監督のバックアップをしながら精一杯努力してもらいたいと思います」


中野強化委員長挨拶及び、松本氏監督就任について
「4月から強化委員長をやることになりまして、これからどういった形で選手を強化していこうかという中で、僕も現役時代からともに練習した仲間でもあり、引退後は他競技の選手にも非常に信頼を置かれるトレーナーとしても活躍している松本君しか、僕と一緒にやってくれる人はいないのではないかというところから、総監督をやっていただきたいと思い、ちょっと時間はかかりましたが、承諾していただきましたので、今回こういう発表の運びとなりました。
とにかく僕らの目標としては、オリンピックでメダルを獲ることも当然ですけれど、オリンピックで勝てる選手は必ず国内のレースでも勝ってもらうと。国内のレースで力を発揮できなければ世界で戦えるような選手にはなれないと思っていますし、これは日頃僕も言っていることですけれど、“日本一は世界一になれないが、世界一は日本一になれる”。つまり世界を目指せば日本一にはなれるのではないかと。
世界で活躍する選手を育てたいと思いますので、ぜひ皆さん、よろしくお願い致します」


松本整総監督挨拶
「皆さんこんにちは。新しく自転車競技の総監督に就任させていだだきました松本です。
中野強化委員長、富原会長から再三の(監督就任依頼の)ご連絡をいただきまして、考えさせてくださいというところから始まり、僕の中で決断に至るまで非常に時間が掛かってしまったわけですが、やると決めた以上はまず最初に僕は、強化チームのターンアラウンド、事業体制というところから考えています。そのためには強化チームがどのような理念で活動するかというのが非常に重要になるかと思います。
強化チームの理念としましては、今も中野強化委員長からお話があったように日本で活躍する選手であってほしいし、世界で活躍する選手であってほしい。これが本当のスーパースターになれると思うんです。中野浩一選手のように世界中が注目する選手であって、日本の競輪のレースも勝てる。こういう選手以外はナショナルチームにはいらない。本当のスーパースターをつくる強化システムを作り上げて行きたいと思います。
そのためにまず今までとは違った、もっと公正な代表選手の選考システムを作って行きたいと。それを含めて7月に記録会をやりまして、そこで間口を広げて強化選手を選考して行きたいというふうに考えています。これは強化委員長、会長にもご了承をいただいていますので、システムそのものを新しくして行って、本当のスーパースターを作るナショナルチームにして行きたいと考えていますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします」


報道陣からの質疑応答
Q 新たな強化システムとは具体的には?
松本総監督
「具体策はこれからいろいろな皆さんとか、強化スタッフで考えていかないとならないんですが、まずは選手自体がどういう経緯でナショナルチームとして活動しなければならないのか、自分たちの責任は何かということをもっと明確にする必要があると思うんです。
ナショナルチームは競技だけやっていればいいんだというのがあったかもしれませんが、JCF自体が競輪の補助金をいただいているわけで、競輪の補助金というのは競輪のお客様のお金で運営されているものですから、それでナショナルチームに派遣されている以上、競輪に貢献する選手でなければならないと考えますので、日本の国内のレースでももちろん人気に応える選手であるべきだし、ちゃんと斡旋をこなせる選手というものを目指してもらいたいと思います。そのためのトレーニング、その他システムを考えて行きたいということです」


Q 短距離(競輪選手)以外の種目の選手に関しては?
中野強化委員長
「短距離以外の種目に関してはJCFの組織の形からして正常ではない部分があるので、そのあたりも会長と一緒にきちんとした形にして行って、全体的に強化ができるようにと考えています。
こういう話になるのは現在、自転車競技の中でオリンピックでメダルを狙える種目というとどうしてもトラック種目になってしまうと。ですから他のロードやBMX、MTBというのも当然強化をしなければいけないけれども、現状はトラック種目が中心になるというのはこれはもう仕方のないことで、組織がきちんとして行けば他の種目も強化というのは当然できて行くのではないかなと思いますし、そういう全てを強化委員会でやっていきたいとは僕は思っています」

松本総監督
「競輪選手に関しては特別な任務を背負っているところがあると思います。
例えば僕が指導している選手のフィギアスケートであるとか、スケルトンであるとか、その競技の成績が良ければそれでいいんですね。それがその競技の発展に繋がるわけですが、競輪に関して言えばそうではなく、競技の成績が良ければ競輪の普及発展に繋がるかというとイコールではないところがあります。競輪ファンの支持を受けるアスリートでなければ、競輪事業の発展には繋がらないところがありますので、もちろん世界に通じるトップアスリートである必要はありますけれども、競輪ファンの皆さんからも応援してもらえる選手になっていただきたいと思います」


Q 競輪選手の場合、競輪で勝つはもちろんとして、国内で勝つということは全プロや全日本選手権など競技大会も含めてなのか? 競技大会の位置づけは?
松本総監督
「この大会は何の選考であるかというのを本来はきちんとアナウンスすべきだと思うんです。これに勝った人にはどういうメリットがありますよとか、どの大会に連れて行きますよとか、ナショナルチームに入れますよとか。そういうことはその都度、その大会の前に先駆けて本来はアナウンスする必要がある。例えば、“この大会はアジア大会の選考大会です”と言って、優勝したけど実際にはアジア大会に行けないというようなことがないように、明確にアナウンスして行くということからまずは始めて行くと。その試合自体のポジションが、全体の構想の中のどこにあるかということを、まずいろいろな意味でこれから全て分かりやすく発表して行くことになると思います」

富原会長
「今まで大会と言いましても、こんなことを言ったら怒られるかもしれませんけど、値打ちがないという感じには私にも見えました。やはりちゃんとしたランク付けをして、お客さんに見に来てもらえるような大会にして行きたいと私は思っています。ヨーロッパでは自転車競技はすごくお客さんが入ります。それは文化の違いで無理かもしれませんけど、せめてそれに近いような状況にと。単に自転車競技が行われていますよというだけじゃなくて、この大会にはこういう重みがありますよというようなことを明示して、監督が言われたような形で今後は新しく変えて行きたいと思っています」


Q 松本監督は(スケルトンの)越和宏選手や(フィギアスケートの)織田信成選手など指導しているが、今後は?
松本総監督
「彼らとの契約は会社でやっていますので、それはそれで企業として継続して行きます。いろいろ(監督就任の決断に)時間がかかったというのは僕自身がそういうことも含めて、実業家としての目標に向かって進んでいる半ばであったので、僕たちの事業を応援していただいている方々、関わっている皆さんにご了承していただかなければ今回の発表には漕ぎつけられないこともありまして、僕自身の意思プラス、関わっている皆さんにいろいろな意味でご説明の時間が必要だったからです」


Q 他競技の選手のトレーナーをしていたことは、これからどのように活かしたいか?
松本総監督
「他競技で僕が最初に始めた時には、“あなた、やったことがないでしょう”という先入観の上で、話をされることが非常に多かったんですが、今はそういうことを言われることはなくなりました。
どの競技にも通ずるところはたくさんありますし、どの競技でも本当に結果を得る選手たちの考え方というのは非常に近しいところがあります。チャンピオンになれる人の考え方というのは、僕はある程度理解しているつもりです。みんながそういう思考パターンに、結果を出せる人たちの思考パターンに近づけて行く必要があると思うので、そのあたりは多種多様な競技の全日本クラス以上の選手を今も指導していますし、そうした経験やそこから研究してきたこと、また自分自身の競輪選手としての生活で得たことなどを上手く伝えて、本当に自分自身が持っている潜在能力を開花していただけるように指導していきたいなと思っています」


Q 世界のスーパースターになるために現在の日本人選手に必要なこと、足りないことは?
中野強化委員長
「今、ワールドカップとか世界選手権に参加していますけれど、前回の北京オリンピックを見ていただいても分かるように、本人たちの気持ちも盛り上がって、周りも上手くサポートして行けば、結果というのはある程度得られるのではないかなと思っています。ただ、やはり根本的なところの力の差というのも若干感じられるところはあるので、そこはしっかりした形で松本監督に強化していただきたいと。(自分自身の)経験もありますし、それは松本監督と選手に伝えて行ければ、それなりの結果を得られるのではないかと僕は思っています」

松本総監督
「現状から言って、今すぐ“はい、メダル獲ります”と言えるほど世界と近い位置にあるとは思えていないんですが、ロンドンオリンピックに向けて、ナショナルチームの選手が本当にそういった気持ちで挑戦したら僕らにもチャンスがあると思える態勢をまず作って行きたい。その上でメダルをしっかり狙える、そういうチームになって行かなければと思います。自分で勝手に練習していたらメダル何個も獲れますよ、というレベルではないですから。そういったものをしっかり強化チームとして作り上げて行くことが、まず第一の目標です」


記者会見の内容は以上です。
質疑応答の中で、JCFの体制について触れられた部分がありましたが、その際記者からの「JCF内部の総入れ替えも?」という声に、富原会長が「総入れ替えします!」と力強く即答されたのが非常に印象的でした。風雲急を告げるのか…。
ともかくJCF、そしてナショナルチームが新たな、そして激しい動きを見せていることは間違いありません。


その動きの一環として、松本総監督の強い意向で7月5日(火)に「第一次トラックナショナルチーム選手選考会」が前橋グリーンドームで行われます。この選考会への参加はロンドンオリンピック出場を希望するなら「必須」と実施要項にも記されていることもあり、現強化指定選手はもとより、かなり豪華な面々が登場するようです。
また、この場でトラック競技以外の種目について大きな発表がされる予定との噂も…?
この選考会の模様はまたお伝えしたいと思います!


第一次トラックナショナルチーム選手選考会実施要項はこちら。当日のスケジュールもあり。
http://jcf.or.jp/files/downloads/2011/05/1senko_yoko.pdf



宮澤崇史選手と挨拶をする松本総監督。後ろには中野強化委員長の姿。6月に岩手・八幡平で行われた全日本ロードにて。