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 2014 全日本自転車競技選手権オムニアム 後半戦レポート。男子は窪木一茂が初優勝、女子は塚越さくらが2連覇!

2014 全日本自転車競技選手権オムニアム2日目、勝敗を決する後半戦のレポートをお届けします!
前半戦に引き続き、写真とレースレポートは鹿屋体育大学の佐藤一朗コーチです。


♦2014 全日本自転車競技選手権大会オムニアム  後半戦レポート
Text&Photo Ichiro SATO


★女子オムニアム
IV. 500mタイムトライアル
この種目では世界でも上位の実力を持つ塚越さくら選手(鹿屋体育大学大学院)が、本来の調子では無いものの37秒498のタイムでトップタイムをマーク。2位には優勝争いをしている小島蓉子選手(日本体育大学大学院)が37秒992のタイムで続き、短距離系の種目を得意とする斉藤望選手(日本体育大学)が38秒950で3位に入り三強の一角に食い込んだ。



4種目目500mTT1位の塚越さくら選手 Photo:Ichiro SATO



2位の小島蓉子選手 Photo:Ichiro SATO



3位の斉藤望選手 Photo:Ichiro SATO


V. フライングラップ
タイム系のレースでは実力がそのまま結果に繋がる為、タイムトライアル同様スピードに長けた3選手が上位を占める結果に。1位塚越さくら選手(鹿屋体育大学大学院) 15秒011、2位小島蓉子選手(日本体育大学大学院) 15秒342、3位斉藤望選手(日本体育大学) 16秒030。


この結果、5種目を終えた時点での暫定順位は塚越さくら選手(鹿屋体育大学大学院)が198ポイントでトップにたち、それを8ポイント差で小島蓉子選手(日本体育大学大学院)が追う展開となった。3位に付けている中村妃智選手(日本体育大学)も20ポイント差で、最終種目のポイントレースでLapが決まれば十分優勝のチャンスは見えてくる位置に付けている。



5種目目フライングラップ1位の塚越さくら選手 Photo:Ichiro SATO



フライングラップ2位の小島蓉子選手 Photo:Ichiro SATO



3位の斉藤望選手 Photo:Ichiro SATO


VI. ポイントレース
8名でスタートしたポイントレースは、ゆっくりとウォーミングアップをするように淡々と周回を重ねて行く。最初のポイント周回に入ると江藤里佳子選手(鹿屋体育大学)がアウトコースを一気にスパート、それをきっかけに全体のスピードが上がっていく。
中盤に入ると優勝のためにはLapを狙いたい中村妃智選手(日本体育大学)のアタックで集団がばらけ、それに反応した塚越さくら選手(鹿屋体育大学大学院)とブリッジをかけて追いついた小島蓉子選手(日本体育大学大学院)の3人でエスケープが決まる。しかし優勝を争う3人で飛び出したことで協調体制は取れず、めまぐるしく先頭交代を繰り返しながらポイントの周回にスプリントを繰り返す。
レースも後半に入ったところでペースの上がらない集団をLapしたあとも3人がレースの中心となりポイントを連続して取り続け、塚越選手50p、小島選手46p、中村選手46pと非常に接戦となったポイントレースも塚越選手が制した。
この結果6種目中5種目1位、1種目2位となった塚越選手がトータルポイント248ポイントで優勝、2位小島選手236ポイント、3位中村選手224ポイントとなった。



6種目目ポイントレース Photo:Ichiro SATO



エスケープを決める3人(写真左から塚越選手・中村選手・小島選手) Photo:Ichiro SATO



オムニアムの優勝を決めた塚越選手(写真左) Photo:Ichiro SATO


◎女子オムニアム最終結
優勝 塚越さくら選手(鹿屋体育大学大学院)  248ポイント
2位 小島蓉子選手(日本体育大学大学院)   236ポイント
3位 中村妃智選手(日本体育大学)      224ポイント
4位 斉藤望選手(日本体育大学)       177ポイント
5位 江藤里佳子選手(鹿屋体育大学)     174ポイント
6位 神庭睦実選手(順天堂大学)       145ポイント
7位 清水知美選手(八戸学院大学)      110ポイント
8位 春原美季選手(順天堂大学)        96ポイント



女子オムニアム表彰式(左から2位小島選手・1位塚越選手・3位中村選手) Photo:Ichiro SATO


優勝者インタビュー 塚越さくら選手
「今回はタイム系の種目でベストを目指していたのですが、どの種目もタイムが思うように伸びなかったので悔しいです。レース系の種目ではエリミネーションでは自分の中でも良かったと思うのですが、ポイントレースではもっと動けたら良かったのですがまだまだ力が無くて思ったように動けなかったのが残念。海外の大会を経験することで苦手だったレース系でも落ち着いて走る事が出来るようになってきたと思うので、これからも自分の力を出し切れるように頑張って行きたい。」


★男子オムニアム
IV. 1kmタイムトライアル
今大会に6名のエントリーをした朝日大学は大学自転車競技界で短距離の強豪校として知られるチーム。その中でも1000mTTの優勝経験を持つ相馬義宗選手や松本貴治選手と、現在中距離最速のスピードを誇る一丸尚伍選手(EQA-U23)の争いに注目が集まった。第2組で出走した松本選手が1分6秒204の好タイムを出すと、第7組で出走した一丸選手がそれを上回る1分5秒148でトップに立つ。その後このタイムを更新する選手が現れないまま最終組がスタート。窪木一茂選手(和歌山県教育庁)が序盤から好走するも1分5秒861と及ばず、一丸選手の1位が決定した。2位窪木選手、3位松本選手。



4種目目1000mTT1位の一丸尚伍選手 Photo:Ichiro SATO



2位の窪木一茂選手 Photo:Ichiro SATO



3位の松本貴治選手 Photo:Ichiro SATO


V. フライングラップ
この種目でもタイムトライアル同様にスピードのある一丸尚伍選手(EQA-U23)が13秒233のトップタイムを記録し、1kmタイムトライアルで3位だった松本貴治選手(朝日大学)が13秒634で2位に入り、13秒789のタイムで窪木一茂選手(和歌山県教育庁)が3位となった。


この結果、5種目を終えてインディヴィデュアルパーシュートで1位の他3種目を2位、1種目を3位とまとめた窪木一茂選手(和歌山県教育庁)が190ポイントで暫定トップ。レース系2種目で1位になりつつもタイム系で順位を落としてしまった橋本英也選手(鹿屋体育大学)が14ポイント差で2位、1位の種目こそ無いが大きな取りこぼしをしていない原田裕成選手(鹿屋体育大学)が28ポイント差の3位となった。短距離系2種目で1位となった一丸尚伍選手(EQA-U23)は1種目目のスクラッチでのDNF(1ポイント)が響き43ポイント差の4位とやや苦しい展開となった。



5種目目フライングラップ1位の一丸尚伍選手 Photo:Ichiro SATO



2位の松本貴治選手 Photo:Ichiro SATO



3位の窪木一茂選手 Photo:Ichiro SATO


VI. ポイントレース
最終種目となるポイントレースは、それまでの5種目で獲得したポイントを持ち点としてスタートする最終ステージとしての種目。優勝争いをする選手はこの種目での勝敗よりも総合での勝敗を重視するため、お互いの動向を注視するマーク戦が展開される。一方ここまでの獲得ポイントで大きなビハインドを喫している選手は逆転優勝を目指してLapポイント(+20)を狙う展開となる。
トップの窪木一茂選手(和歌山県教育庁)と2位の橋本英也選手(鹿屋体育大学)のポイントの差は14ポイント。橋本選手が逆転をするには窪木選手にポイントを与えず自分がポイントを獲るか、Lapを決める事。逆に窪木選手が優勝するためには、橋本選手を逃がさずにポイントに絡んでいくこと。自ずと両者は執拗なまでのマーク戦を展開する。1回目のポイントで橋本選手が5ポイントを加算れば窪木選手もしっかりと3ポイントを獲得し、2回目のポイントでは逆に窪木選手が5ポイント、橋本選手が3ポイントと一進一退を繰り返す。
そんな両者のポイント争いの間隙を突いて3位の原田裕成選手(鹿屋体育大学)、小林泰生選手(日本体育大学)、渡邊翔太郎選手(朝日大学)、橋本直選手(鹿屋体育大学)の4名がエスケープを決め、集団に近づいたところで原田選手が一気にペースを上げ、それに続いた小林選手と2人でLap認定を受け20ポイントを加算。これによって原田選手は2位橋本選手と2点差まで追い上げ、一気に優勝戦線に絡むことになる。
しかしエスケープした選手が集団に戻りポイント獲得が可能になった事で、再び窪木選手と橋本選手のポイント争いが激しく繰り広げられる。レースが2/3を消化したところで窪木選手と橋本選手のポイント差は6点にまで縮まり、逆転が見えてきたところで再び原田選手を含む数名の選手がアタック。牽制しあっていた窪木選手と橋本選手が追走体制に入れないままエスケープは徐々に集団に追いついていくものの、人数が多かったためポイント周回の度に協調体制がとれずなかなかLapが決まらない。
少しずつ人数を減らし、いよいよLapが決まろうとした時、窪木選手と橋本選手が一気にペースを上げスパート。これにより集団はばらけ、エスケープのグループ、追走のグループ共に少数となりバンク上を点々と周回する形となった。原田選手を含むエスケープグループは遅れた選手を順次吸収し集団を形成に至るが、これによってLap認定されることは無く、追いつかれた選手のDown認定(-20)となった事がその後のレース展開を大きく左右することに。エスケープが集団をラップすれば原田選手に20ポイントが加算され一気にトップに立つはずだったが、遅れた選手が20ポイント減算をされたため、窪木選手と原田選手の差は変わらないまま。
そこからゴーまでの20周は窪木選手・橋本選手の2人と集団のパーシュートレース。集団が追いつけば窪木選手・橋本選手もDown認定をされ原田選手の優勝、追いつかなければ窪木選手の優勝が決まる。集団から後れている橋本選手はポイント獲得が出来ないため逆転は無く、集団の選手も追いつくことに意味は無くむしろ集団内でのポイント獲得によって上位進出を目指したい。それぞれの思惑が絡み合い牽制と追走を繰り返しながらレースは進み、最後まで追走を諦めなかった原田選手を振り切り、窪木選手が全日本オムニアム初制覇を果たした。



6種目目ポイントレース Photo:Ichiro SATO



中盤エスケープを決める原田選手(前から渡邉選手・原田選手・小林選手) Photo:Ichiro SATO



オムニアムの優勝を決めた窪木選手(写真中央) Photo:Ichiro SATO


◎男子オムニアム最終結
優勝 窪木一茂選手(和歌山県教育庁)   219ポイント
2位 橋本英也選手(鹿屋体育大学)    213ポイント
3位 原田裕成選手(鹿屋体育大学)    193ポイント
4位 吉田隼人選手(シマノ)       164ポイント
5位 一丸尚伍選手(EQA-U23)      141ポイント
6位 倉林巧和選手(日本体育大学大学院) 139ポイント
7位 小林泰生選手(日本体育大学)    115ポイント
8位 久保田元気選手(日本大学)     113ポイント
9位 浦田真成選手(朝日大学)       94ポイント
10位 新村穣選手(法政大学)        75ポイント



男子オムニアム表彰式(左から2位橋本選手・1位窪木選手・3位原田選手) Photo:Ichiro SATO


優勝者インタビュー 窪木一茂選手
「優勝出来て本当に嬉しいです。14ポイント差を持ってポイントレースに挑めたので、橋本選手とポイント差が付かないようにマークして、最後にLapする脚を残しつつレースを進めました。終盤原田選手を含む逃げが迫ってきたときは、追いつかれないようにペースを上げて橋本選手と共にノーポイントで終わることでリード差を保ってゴール出来る様先頭を引き続けました。今回は僕が優勝という形でレースを終えましたが、レースが終われば同じ日本代表として戦う仲間なので、今後とも切磋琢磨してチームパーシュートとオムニアムでオリンピック出場が果たせるよう頑張って行きたいと思います。」